紙バンド用の原紙の流れ 2016

紙バンドの仕事を、紙バンド=紙製品と捉えて兎屋をやっています。そこには、二大紙産地である愛媛県宇摩地区と静岡県富士地区の両地区と兎屋との因縁があります。

愛媛県宇摩地区とは旧伊予三島市・旧川之江市・旧土居町・旧新宮村を指し、2004年これら2市1町1村が合併し四国中央市となっています。この合併の為、古代大化の改新の頃につけられた「宇摩郡」という由緒ある名前は消滅しました。
静岡県富士市地区は富士市と富士宮市を指しています。こちらも製紙や紙に関わる会社が多いのが特徴で、富士山地下水や富士川工業用水として利用しています。また富士地区は東西大消費地に近く愛媛県紙産地に比べ産業的に活発な時代がありました。その為、中小と言っても製紙マシンは大き目です。

兎屋店主の社会人スタートが愛媛県伊予三島市本社(現:四国中央市)の紙代理店だった関係で、同じ愛媛県とは言いながら、生まれ故郷とは縁のない全く気風の違う、伊予三島市や川之江市との関係が強くなったのです。

その後、東京支店時代に知り合った方の導きで、これまた縁もゆかりも無い静岡県富士宮市の製紙会社に転職した影響で、富士地区の方達とのご縁が出来たという事です。いろんな不思議が重なっています。そして、富士市で手芸用紙バンドの事を知り、「いろいろあって」・・・・兎屋をやっています。ついでに言うと、高知県紙産地とも高知移住時代にご縁が出来ました。

さて、えらく前置きが長くなりましたが、この愛媛県と静岡県が、実は手芸用紙バンドの紙流通に大きく関係しているのです。皆さんが使われている手芸用紙バンドは大きく分けて①クラフト紙バンドと、②カラー紙バンドの2つです。この①②と原紙との関係がおもしろいのです。(おもしろいと感じるのは私だけかも知れませんけど)簡単に書くと・・・・・・・

①クラフト紙バンド=原紙:静岡県

②カラー紙バンド=原紙:愛媛県・高知県 と割れています。

最近はあまり言わなくなりましたが、以前は紙バンド手芸の事を「・・・紙バンドは100%再生紙で作られ、環境にもやさしいのです・・・」のアノお題目の元は、静岡県産のクラフト紙にあり、その製紙会社ではクラフト紙を抄造する時に上質なクラフト古紙を使っていました。今でもその体制は変わらないと思いますが、いつも原料が100%古紙かどうか、私は分りませんし、そんな事は製紙会社ではあまり重要な事ではなくむしろ日常です。

上質クラフト古紙を集めるのは難事で、景気が悪く、産業構造がどんどん変化している現代は古紙の集まりが低調で、品質は低めになります。

因みに兎屋紙バンドの「くらふと/愛媛県産」と「クラフト/静岡県産」はどちらも静岡県のクラフト紙を使用しています。ロットによって色目が変わる理由は原料古紙率と品質のばらつきで、その変動理由もこれで説明が付きます。

一方、カラー原紙は、ごく一部の例外以外を除いて、ほとんど愛媛県四国中央市の製紙会社2社で生産されていて原料は100%パルプです。尚、兎屋のコレクションカラー紙バンドは特別に高知県産の原紙を使っています。

原料に古紙を入れる事も可能ですが、消費地から遠い愛媛県の製紙会社は、良質で均一な古紙が集まりにくく、特に中小製紙会社は、入手や扱いが困難な古紙よりもパルプによる抄紙を選んで来たのです。

パルプ原料で抄かれた紙は古紙原料の紙より価格が高くなりますが、それも含めライバルの静岡県紙産地に対して常に後塵を拝し続けていた事がバネになり、今の四国中央市の紙産地を保っていると私は見ています。残念ながら静岡県富士市ではカラー原紙を抄く会社は2000年ごろに消滅しています。