2001年2月兎屋の兎 2008

紙バンド手芸材料の専門店として2002年の春に開業してこの5月の連休でちょうど6年です。遊びにも行かず、わざわざゴールデンウィークの真ん中を選び、藤沢市の税務署に届を出しに行った事を思い出します。サラリーマン時代の連休と言えば友達や家族と一緒にキャンプをするのが常でしたが、いきなり会社を辞めて1年間のフリーター生活をした後で始めた紙バンドの仕事には相当気合を入れていました。
「兎屋」の名前の由来について人からよく聞かれるますし、その時には「家で兎を飼っているんですよ、兎はかわいいですからね」と返事しています。ウソではないですし、訊ねた方もそれで満足げです。しかし実は「兎」にはこだわりが有るのです。

それは当時勤めていた製紙会社の社長と打ち合わせの最中に話がもつれ、社長の一言に対して「では辞めさせて貰います」と言い事務所を出てしまい、社長も去る者は追わずの性格で(それはよくわかっていましたし、その社長にはお世話になっていました。私に甘えがあったのでしょう)そのまま辞める形になったのですが、次の仕事の当てが有るわけではなく、さすがにその夜は一睡も出来ませんでした。2001年2月の事でした。

寝ようと布団に入るのですが、眠れず逆に冴えて来ます。早めに寝たのも影響してか、とても寝るような状態ではなく、家族が寝静まってから起きだして来ました。そして始めたばかりのハングル勉強をやって気を紛らわそうと、紙にハングル文字を延々書いていました。しかし疲れるどころか、気分は滅入る一方で、頭は何とかしようと働いています。

ハングル勉強にも疲れボーっとしていたら、部屋で飼っていた兎が寄って来ました。近くに来た兎の横に寝ころびながら自然に手は兎をなでていました。30分位なでていたでしょうか?不思議に心が静まって行きました。その時の事は今でも覚えています。ひんやりとした冬の居間、午前2時か3時ごろだったと思います。猫や犬をなでる行為は精神的に良いと聞いた事が有ります。兎でも同じだったんですね。
それから暫くアルバイト生活をしながら、これからどう生きようか考えていました。慣れた紙業界に転職すると言うのが私にとって一番良いとも思っていましたが、製紙会社時代に垣間見た手芸用紙バンドの世界が面白かった事を思い出し、自分でどこまでやれるか?ここでやらなかったら一生後悔するぞと思って開業し、屋号をつける時に兎と過ごした夜を思い出し「兎屋」としたのが一番の理由です。

ウチの兎は静岡県富士宮市で求めた兎で、その後家族で神奈川県茅ケ崎市に移住し、2006年夏に高知県幡多郡黒潮町に引っ越して来ました。いつも家には兎がいます。もう11歳のおじいさん兎です。夜は危ないのでゲージに入れていましたが、最近は動作もゆっくりになったので、一日中放し飼いです。部屋では私と兎の二人っきりです。兎はさびしがり屋と言いますが、夜私が目を覚ますと兎は私の布団の縁にお尻をくっつけて(つくなんで)います。なにかに触っていたいのかもしれません。大体朝までその格好です。朝、私が起床すると後を追って来ます。夕べも兎と寝たなぁ・・・と思うと癒される気がします。2001年の2月のあの晩も兎と二人っきりでした。