おはぎ 2008

この時期(お彼岸の頃)
日本人なら「おはぎ」でしょう。私の中で「おはぎ」は特別なお菓子です。子供の頃から「おはぎ」は食べていましたが、忙しい母親が食べさせる「おはぎ」はもっぱらスーパーマーケットで売ってる「おはぎ」です。この買って来た「おはぎ」と言うのがミソで、糖尿病だった父の為に作る母の料理は、砂糖が極端に少ない薄味の料理ばかりで、当然家でお菓子作りなどしません。それに加えて、ケチだった母親(本人は自慢です)はキャラメルやチョコレート、せんべい、おかき等の駄菓子をあまり食べさせてくれませんでした。その代り特別な日や、母親の気分の良い時はお菓子を食べさせてくれ、その場合のお菓子とは手料理と違って甘い和菓子で、「おはぎ」や「桜モチ」でした。たまに食べるお菓子の時間は母親の機嫌がいい証拠、しかも甘い。子供心に「おはぎ」の良いイメージが刷り込まれて行ったのだと思います。

さて、数ある「おはぎ」のあれこれを話す前に、大事なパーツである、「あんこ」の話をして置きます。小豆の「あんこ」には出来上がりの状態で、「粒あん」と「こしあん」の2種類が有ります。私は話が尽きた時に使う(絶対場が盛り上がる話)と言うのをいくつか持っていますが、その中で「こしあん」と「粒あん」どっちが好き?と言うのが有ります。・・・・もちろん場の雰囲気で話題は選びますよ・・・・するとほとんどの人は「私はこしあん」「おれは粒あんだな」などと口々に言い始めます。そこで間を置いて「桜モチって関東と関西では違うんだよ」と言えば、後は皆さん勝手に盛り上がって行きます。試しにやって見てください・・・・?話がそれました。

で、私の好きなのは「きな粉のおはぎ」です。「あんこ」の甘さときな粉の素朴さが混ざって得をした気がします。次に好きなのは「こしあん」の「おはぎ」この2種類あれば充分です。ところで静岡県富士宮市に住んでいた時に「おはぎ」で驚いた事が有ります。いつものように?「おはぎ」ネタで盛り上がっていた所「・・・・きな粉のおはぎにあんこなんか入ってないよ・・・・」と言うのです。不思議な事を云う人だなぁ、きな粉の「おはぎ」は中が「あんこ」でそれをもち米で包み、外側をきな粉でくるんでいるのが常識で、「あんこの入ってないきな粉のおはぎはあなたの家だけですよ」と言ったところ、その人は「違うよ、富士宮ではきな粉のおはぎは周りがきな粉でまぶしてあるだけ」と言うので、周りにいた友達に順に訊ねたところ、なんとみんな「あんこは入ってないよ」と言うのです。ショック! 関東関西ネタで桜モチと道明寺の違いは知っていても、「あんこ」無しの」きな粉の「おはぎ」には驚きでした。因みにお店で売っているきな粉の「おはぎ」には、ちゃんと「あんこ」は入っていましたが、手作りで作る時はやはり「あんこ」抜きだそうです。

おまけ1:高知県幡多郡では、きな粉の「おはぎ」の事を「ばっぽ」と呼ぶそうです。じゃあ「あんこ」の「おはぎ」はと言うと、こっちは普通に「おはぎ」・・・・歴史が有るお菓子だけに、地方によって特色のある「おはぎ」です。また「おはぎ」だけでこれだけ話が出来る私もやっぱり日本人です。因みに高知県でも幡多地域の言葉は皆さんが映画やテレビで耳にする土佐弁とは全く違います。また、この「ばっぽ」と言う言葉は事務所でお手伝いをして下さるOさんから教えて頂いたのですが、Oさんは地元の人でも使わないような言葉を日常語として使っています。Oさんはおばあさんから教わったのだと言っていました。私はOさんの方言は「古語」だと思っています。

おまけ2:試しに「ばっぽ」を検索したところ、餅菓子の幼児語 とか、もち米で作るお菓子といった事が出て来ました。地域で言えば愛媛県の中・南部から大分県にかけての言葉の、いわゆる豊後水道両岸地域。なので愛媛県南部に接する高知県幡多郡で同じ言葉が存在する事は納得出来ましたが、幡多郡の場合はきな粉の「おはぎ」に限定される事から、地域外から伝わった言葉という公算が高いと思います。それと岐阜県でも使われる言葉のようで、方言=京都を中心とした古い言葉 の一例ではないでしょうか?面白いです。