股旅(またたび)/市川昆監督 2006

「バルトの楽園」に引き続きもう一本DVDを紹介致します。1973年製作東宝の時代劇、「股旅」です。私達の年代からもう少し上の年代の方達なら、「!」っと来るかと思います。

市川昆監督が1972年から手掛けた「木枯らし紋次郎」(テレビドラマ)はヒットし、その後入れ替わり監督が替わったりシリーズが出来たりで大ブームを起こしました。その市川昆監督が「木枯らし紋次郎」の成功後に映画に撮ったのが「股旅」です。「木枯らし紋次郎」は当時中学1年生だった私も大好きで、家では見せてもらえないテレビの為、親戚の伯母さんの家に泊まりに行きほとんど見ています。当時住んでいた愛媛県では毎週土曜日のゴールデンタイムで放映されていたので泊まりも可能だったのです。

土曜日の午前中は学校で友達に「今日 木枯らし紋次郎見る?」なんて話していましたし、毎週のお泊りはウキウキでした。「木枯らし紋次郎」の台詞、しぐさ、ドラマの作り方、殺陣、ストーリー、それに上条恒彦の歌うテーマソング・・・・そう言えばテーマソングが始まる前に流れる「・・・上州新田郡三日月村・・・・」から始まる渋~~~いナレーションをみんなで競って覚えていたっけなぁ。

ナレーションと共に始まるタイトルの1場面、この雰囲気も好きでその後成人して全国の林道をめぐってツーリングしてる時、同じような風景に出会う度に、あぁ 木枯らし紋次郎だなぁ と思ったものでした。

「木枯らし紋次郎」は今までの時代劇とは全く違っていて、決め台詞の「あっしには関わりの無いことで・・・」は当時のシラケブームに乗って瞬く間に日本全土に流行しました。「木枯らし紋次郎」はドラマを越えて、その頃の日本を写していた気がします。その雰囲気をモチーフに市川昆監督が作り上げたのが「股旅」です。

股旅(マタタビ)モノとは時代劇の中でも特に江戸時代のヤクザ者に焦点を当てた作品を言います。有名な所では、東海道随一の親分清水の次郎長や、赤城の忠治こと国定忠治が股旅モノの双璧と言えるでしょう。

股旅モノは明治以降、演劇や浪曲等で頻繁に上演され、トーキー映画が始まった当初からも日本に於いては重要なカテゴリーとして取り扱われていましたが、その為娯楽面が強調されるのは当然で、特に日本映画全盛時代のカラー作品は、勧善懲悪のヒーロー物として確立されていました。股旅ものは映画会社のドル箱だったのです。時代劇と言えば、他には捕り物が有りますし、水戸黄門などは独特な切り口の時代劇で人気を集めています。しかしやはり日本では股旅モノが群を抜いて人気が有るようです。その勧善懲悪や義理人情の世界を描いていた股旅モノの世界に、全く新しい風を吹き込んだ作品が「木枯らし紋次郎」であり、それを完成させた作品が映画「股旅」のようです。


主演は、尾藤イサオ、萩原健一、小倉一郎、このキャスティングからして、当時の有名俳優が演じていた時代劇とは一線を画しています。映画内容の話しは避けますが見終わってからもう一度、冒頭部3人が土間で挨拶をしている所を見てしまいました。その場面で淡々とナレーションが説明を付けていく手法は、まさに「木枯らし紋次郎」そのものでした。40代後半から50代の方、お奨めします。佳作ですよ。

注)この記事は2007年1月12日(旧)兎屋ブログからの転載です。