いびしない 2006

事務員のOさんはバリバリの白浜弁使いです。

白浜は戸数数十戸の小さな漁村です。高知県(土佐弁)→幡多郡(幡多弁)→黒潮町(大方弁:佐賀弁)→白浜(白浜弁)となっていて、Oさんの実家はイセエビ専門の漁師です。

この白浜という所は、平成の大合併後こそ幡多郡黒潮町になっていますが、この春までは幡多郡佐賀町と呼ばれていて、カツオ漁の基地です。その佐賀町西部にある白浜部落は、山と国道に挟まれた土地に有り目の前は太平洋です。で、その部落でふつうに話されている言葉を、当たり前にOさんは使うのですが、私にはほとんどわかりません。

愛媛県宇和島市出身の私にとって、高知県幡多郡の言葉は、高知中央の土佐弁より身近に聞こえますが、Oさんの白浜弁には面食らっています。

昨日もOさん「・・・・いびしない・・・・」

私   「?(イビシナイ)  !いびつな ですか?」

Oさん「ブ~~~~ 違います」

今日もOさん「・・・・およけない・・・・」

私   「?(オヨケナイ)  ?およけるって言葉はありますか?」

Oさん「およけない は およけない です。」

私   「はぁ~~~」

この(いびしない)も(およけない)も 汚いという意味だそうですが、汚いのランクというか雰囲気が微妙に違うらしいです。

共通語なら、汚いは汚いで、せいぜい小汚いがあるくらいでしょうか?方言マニアの私にはOさんの話す、白浜弁は宝の山に見えてきます。いつもの(方言=きっと昔の言葉が残ってる)と思うと、ワクワクします。家に帰ってそのままの言葉を検索したりしています。今回の(いびしない)も(およけない)も或る方がネットで意味を公開していました。

さて、そう言った古い言葉から来る方言には、事を表すのに沢山の言い回しが有ります。いびしないもそうです。単に汚いという事を言うのに、われわれ日本人は沢山の言葉を持っていた民族なんでしょう。それは方言だけに留まらず、若い人達が作り出す新語にも言えると思います。日本語には、言葉や表現の多様性に耐えうる力が宿ってると思わざるを得ません。

残念ながら日本語の乱れも見られる昨今ですが、古い言い回しや、方言を楽しむ余裕が欲しいと思いながら、明日はどんな白浜弁が聞こえるか。耳を澄まして居ましょう。

注)この記事は2006年11月14日(旧)兎屋ブログからの転載です。