古典の宿題(暗記)2006

百人一首好きの私は子供に小学校低学年頃から刷り込みをしています。そういえば和歌では有りませんが、正岡子規の「柿食えば~・・・法隆寺」の句は長男、次男とも幼稚園に入る前・・・。まだ片言の時に、覚えさせていましたっけ。それは日本人として自覚を持ってもらいたいと云う願いからです。

国際化云々が取りざたされて久しいですが、(面白い事に国際化の重要性は日本が開国した明治維新の頃から唱えられていた事です・・・100年以上も・・・)外国の方と仕事をしたり、遊んだりする、いわゆる交流が深まれば深まるほど、かの国の人は私たち日本人に日本人としていかなるものかを求めてきます。それに答えられないでいると、ある一定の所で交流は滞ってしまい、その後来るべき、出会うべきチャンスを逃してしまう事は必定でありましょう。

明治100年以来、国際化の掛け声の中、英語教育など熱心に取り組まれていますが、それによって、一定のビジネス・交流は出来ても、「その後」につながらないのが寂しい限りです。特に、相手国の方が、味わい深い方であればあるほど、なお「その後」の心の交流にたどり着きたいものです。そのためには、英語、なども良いでしょうが、まず自国のことをしっかり学んで、誇りを持って欲しいと、願いながら・・・年端もいかない子供に「柿食えば~」とやってました・・・。

百人一首は、正月の時の遊びとして江戸時代から行われていたとの事です。我が家も有る事をきっかけに熱心に始めました。ある事とは長男が小学生6年時の担任の先生が、総合の時間に百人一首を選び、熱心に子供達に教えてくださっていた事です。かなり気合が入っていて、百人一首を授業で行っていると知った私は、それではウチでもということで、5首・・・10首と覚える事にしたのです。それは中学校に入っても続き、次男も覚えるのが当然と云う雰囲気の中、少しずつ覚えています。


さて、長男の通ってる中学校にはM浦先生という国語担当の方がいらっしゃいます。先生は百人一首大会を毎年この時期に企画し、クラス対抗の百人一首大会として開催されます。その人の言動などを子供から聞きだしているうちに、私は確信しました。M浦先生は本当に国語が好きな先生だな。好きな事を生徒に教えるのだから熱心であるし、心もこもっている、教師としてすばらしい先生だなと。先生が百人一首を詠むときは、ちゃんと調子をつけて朗々と読まれるようです。そのような先生に国語を教えてもらってる生徒たちは幸せでしょうね。もっとも生徒達にすれば、「退屈な国語のなにが面白いものか!」と思ってるのでしょうが・・・。あと何十年か後にきっと気づくことが有るでしょう。国語とはもともとそういう運命の教科ですしね。


M浦先生はこの冬休み、二つの宿題を出されました。一つは百人一首を10首覚えなさい。で、もう一つは平家物語の「あふぎのまと:扇の的」の一説を暗誦できるようになりなさいという宿題です。百人一首はともかく、「扇の~」は初めてで、一瞬私も厄介な宿題だなぁと思いました。長男も覚える自信がなく、腐ってましたので、家内が尻をたたき、順に覚えて行きなさいということで、一節ごとに丸覚えを始めました。しかし私は二人の様子を見ていて、なにか違和感を覚えました。(違うな・・・) 

父:・・・!「やめろ、やめろ」

家内:!

長男:「ええ・・やってるのに・・・」 

父:「そんな覚え方あるかい!」

家内:「じゃあどうするのよ!」 

父:「まだ覚えんでええから、プリント見ながらゆっくり声にだして読めや」

長男:「~うみに いったんばかり~」 

父:「もっとゆっくり」

長男:「~う~み~に~・・・」 

父:「お前なめとんのかぁ、普通にゆっくり読めや」

長男:「ウミニイッタンバカリ・・・」 

父:「声が小さいわい! もう一度最初から」

長男:「クソッ」 

父:「何!」

家内:「もう!いい加減にしてよ!」 

父:「お前もわかってないやないか! わしの言うとおりやれや!」

長男:「○▲×■※・・・・」

家内:「フンッ」


※実はこの会話の時、部屋の中は一触即発の雰囲気です。私も家内も長男も戦闘態勢です。今から思うと、平家物語を読むのになんで、こんなに熱くならんといかんのか?と反省しますが・・・。

この様に、(ゆっくり丁寧に、プリントを見ながら 何回も最後まで通して読む)を始めました。少しでも覚えようとしたら、スグに止めさせ、とにかく毎日10回、プリント見ながらすらすらよめるようになるまで続けさせました。・・・続けさせたといっても実は4日あまりで読めるようになります。

皆さんも子供達が古典の暗記の宿題を貰ってきたら、すぐに覚えようとせず、 (ゆっくり丁寧に、プリントを見ながら 何回も最後まで通して読む)を実践なさると良いでしょう。一見遠回りのようですが、確実に覚える事が出来る一番早い方法だと思っています。

4日目になると、あら不思議!ほとんど覚えてるじゃあないですか。残りの数日で、補いだけしてこの宿題も完了となりました。それと意味や時代説明なども合わせて学んで下さい。古典がより身近に感じられます。

さて今日1/18は例の百人一首大会です。8:30~9:30までの少ない時間ですが、父兄の見学も許されています。昨夜ご招待のプリントを見ながら長男に「行ってもいいか?」って問うた所、予想通り却下されました。本人曰く、「応援に来ると気が散るので、来ない方が力が出せる」といわれました。残念・・・。
今朝 8:00いつものように長男はかったるそうに登校していきました。行きがけに 

父:「百人一首楽しんでこいや」

長男:「ああ」

注)この記事は2006年1月18日(旧)兎屋ブログからの転載です。