紙バンドに使用する原紙の色は抄造時、パルプ段階で着色します。紙はパルプの状態と抄造(紙を抄く事)時の環境にもよりますが、色紙の場合は(プラス)色の再現に苦労しています。そうやって出来上がった紙を加工し、最終的に紙バンドにします。
紙バンドにする場合に糊がコーティングされます。簡単に言うと色紙の上に糊が乗っかってる状態になります。当然元の色紙とは雰囲気の違った色となりそれが製品となります。と言う事は更に色の再現性が難しいと言う事です。
色紙には 色上質紙、色中質紙、色クラフト紙など、沢山の種類があります。各製紙会社は色の再現にとても気を使って抄造しています。出来るだけ色を安定的に揃える為には、いろいろな事が考えられますが各社ノウハウとして持っているようです。

それらの紙は抄き上がった状態が最終製品なので、工場で色の管理が可能ですが、紙バンドの場合は加工は別の所でなされるので、色管理が難しいと言う事が言えます。色紙だけなら、色の再現性に工夫の余地が有りますが、紙の表面に後加工が加えられるので、紙バンドの色は出来上がって見ないと判らないという一面があり、色によっても再現難易が違っています。
一般に暗い色より明るい色、薄い色のほうが再現は難しいです。今回新色を作りましたが、紙の段階で色は確認していても紙バンドにしてみないと、名前すら付けられません。
さて、今回の再販群の中でも色の再現が上手く行ったものと、行かなかったものがありました。厳密に言えばすべて色は違っています。赤ぶどうは今回で4回目ですが、いつも違っています。

因みに今回の 赤ぶどうは色に深みがあります。一方、めいぷるは明るくなり「黄土色」に近くなりました。ねず茶は濃くなったでしょうか。それぞれ見てると気になりますが、色紙を抄造してカラー紙バンドを作って商売するからには絶対に離れられない憂鬱な時間です。それらとどうやって向かい合って行くか?
以前製紙会社の営業として、色更紙(紙業界では特更といいますが)を販売していました。皆さんよくご存知の「少年○○」や「ヤング○○」といった漫画雑誌に使われていました。それらの紙は原料が古紙100%なので、常に古紙パルプの元色が違っていて、それに色を付けていくので、同じ色を抄造してるつもりでも色は時間毎に変わっています。大量に作っていても色がドンドン変わるので、抄きあがった色見本を見ながら、色補正をするのですが、実際はその時にはパルプの元色が変わってるので、あまり効果はありません。
古紙の性格上、色は赤味になるので補正しても、補正しても見本どうりになりません。難しい色を抄造するときは、工場全体が憂鬱な雰囲気に包まれていたものでした。いつも心の中で「ちょっと色がずれてるからって、漫画の売れ行きに影響なんかするものか!売れる、売れないは漫画が面白いか、面白くないかの問題だろ!」って思ってました。もちろんそんな事口にすれば、会社は倒産してしまいますけどね。
今回の再販は一度に数色の色が再販されたので、そんなことを思い出しながら、さてこれからどうやって色と付き合っていこうか思案しています。皆さんもロットが違ってる紙バンドを使用する時は気を付けられる事をお勧めします。兎屋でもロットが新しくなるたびにご案内して行きますので、気になる方は兎屋までお問い合わせ下さい。
注)この記事は2005年11月7日(旧)兎屋ブログからの転載です。