伊予鉄バスで市内に向いました。平日午前中のバスの乗客はほとんどご年配の方で、しかも2人以上のグループが多く、みなさんおしゃべりに夢中です。東京、神奈川のバス車内と決定的に違うのは、当たり前ですが、おしゃべりがすべて方言だという事です。方言好きの私はつい聞き入ってしまいました。

伊予鉄バス車内で聞いてると、「~よる。」…「~よる。」という語尾が気になりますし、それがとても多いです。
「~よる。~よる。」は、私も普段使っている言葉語尾ですが、方言なのでどなたにも通じる物では無く、他都道府県の方とお話する時は出来るだけ共通語らしく話しています。(とは言うものの、他の方が聞くと立派な関西なまりだそうです)
その反動でしょうか、親しい仲間だけの時は、自主規制せずおもいっきり方言で話してます。私の場合は伊予弁というより、もっと南の宇和島弁がベースでそれに松山弁が入り、関西弁で味付けがされています。ややこしいのは、宇和島弁のアクセントが、瀬戸内、関西方面のアクセントではなく、東京型のアクセントだという事なのと、私自身、東京と静岡東部での生活が長かったのも原因で、ちょっと微妙な言葉となっています。ついでに家内は神奈川県人なので、さらにややこしいです。
さて、「~よる。~よる。」について使用例を示しながら説明します。「毎日、バスに乗って会社に行きよるンやて」「武智のおばちゃんは、あそこの店でうどんを食べよるで」この2例はそれぞれ、行っている(通っている)と食べていると言う状態を表しています。いわゆる現在進行形です。過去形の場合は、「毎日、バスに乗って会社に行きよったンやて」「武智のおばちゃんは、あそこの店でうどんを食べよったで」と成ります。
現在進行形と過去形は、使用頻度の多い形です。それらすべてに「~よる。~よる。」または「~よった。~よった。」が付けられていると、バスの車内は「よるよるよった」の大合唱になっています。普段聞きなれてる方はなんとも思わないでしょうが、方言マニアの私がじっくり聞こうとすれば、あっちの席でも「よるよるよった」こっちの席でも「よるよるよった」と成ります。・・・食べよる。行きよる。見よる。走りよる。帰りよる。考えよる。持ちよる。作りよる。待ちよる。寝よる。ううん「よる」がいっぱいだぁ。
石川啄木歌の「ふるさとの なまりなつかし停車場の 人ごみのなかに そを聞きにいく」というのを思い出しました。年の瀬、上野駅の雑踏で、事情が有って田舎に帰れない啄木の心境を思い、寂しさと孤独感漂う歌という認識でしたが、こうやってたまに帰った田舎で方言の洪水に会うと、寂寥感というより、もっとあっけらかんとした物を感じます。どちらにしても方言はいいですね。
追伸:因みに例文で使用した「武智」姓は愛媛県中予地区の松山市周辺に多い苗字です。
注)この記事は2005年10月14日(旧)兎屋ブログからの転載です。