再生紙の話(その7)

大手製紙メーカー主導で日本に再生紙の時代がやってきました。コレは世界に例のない事で、誇ってもいいことです。商売の為と言いながらも環境に気を使った商品です。再生紙を作るに当たっては、色々困難も有ったでしょうが、総論的に言えば良い商品であり、ユーザーも時代も求めている紙です。こういう紙を開発して、販売するという事は、紙業界の一員として誇らしく思えることです。お客さんに認められるという事は紙屋冥利に尽きます。

多少価格が高いとか、色が黒いとか、強度が落ちるといった事も、環境に対しての啓蒙活動や技術の進歩でクリアされつつ有ります。日本の紙は特殊なもの以外は、ほぼ再生紙でまかなうことが出来ているでしょう。

さて大手製紙メーカーがこのように大きく変わっているときに中小の製紙メーカーはどうなっていたのかと言うと、一部の特殊な紙を抄造しているメーカーは別として、ほとんどの所は厳しい状態に有ったと言えるでしょうし、今もその状態は変わって居ないのです。

大手メーカーは資金力や技術力が有るので、困難といいながらも再生紙の開発を果たして来ました。しかし中小メーカーには難しい話です。特に紙を取り巻く環境(市況)が冷えているこの十数年は、中小メーカーは新商品の開発どころか、ドンドン倒産、廃業、吸収されて来ました。実は大手もこの十数年、吸収合併を繰り返し、それは代理店や紙商といった業界全体の再編成につながってきたのです。

1980年代の製紙メーカーの数と2005年のメーカーの数はびっくりするぐらい減少していますし、紙の流通に関わる会社も当然ながら減っています。
そういう環境に再生紙は育っているのです。今もそうです。厳しい環境の中で、中小製紙メーカーの中では再生紙に取り組んだ所も有ります。今も操業している中小製紙メーカーは時代の波を生き残った会社です。2005年現在紙業界は小康状態を保っています。

こういった中で、消えていった製紙会社の中には再生紙に取り組む中で、一線を越えた?所も有ったのではないかと私は考えています。再生紙を開発するという事は大変だという事は何回も述べて来ました。しかし設備に掛かる資金が不足したり、技術が追いつかなかったり、古紙の仕入などに支障が有った場合、それでも再生紙を作らなければならないとしたら、どうなるのでしょう・・。

ここで問題になるのは 古紙とはどういうものかという事です。新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙といえば皆さんはよく御存知でしょ。後は牛乳パックもそうですね。でも古紙の種類には沢山のものが有ります。折角なので紙バンド原紙を例にとって見ましょう。

クラフトの紙バンドは昔から有りますが、それは100%クラフト古紙で作られています。再生パルプで作られていると言っていますが、あくまで製紙メーカーサイドの都合でそうなっているだけで、紙バンド屋が原料を指定して作っているわけではありません。ただ社会の流れ的に再生パルプと言ったほうが、聞こえが良いだけです。今までクラフト古紙が安かったので、その原料で抄造しているだけです。もしクラフト古紙が急騰して、逆にバージンパルプが安くなれば、多分製紙メーカーは、紙バンド原紙の値上げを申し入れてくるか、安いバージンパルプで紙を抄くか、のどちらかだと思っています。このような考え方は、製紙会社や紙業界では当然といえます。

ただし昨今の、再生紙を取り巻く環境というものはこのような考え方から一歩進んでいると言えるでしょう。兎屋として紙バンドを、環境に気を使って作る、あるいは販売、加工するのなら、多少の不利は覚悟して、しかもそのリスクは製紙、加工、販売、の三者が均等に負担し、本当の意味で環境に即した手芸材料を広く皆様に提供するという事でなければならないと考えています。

兎屋で販売中のカラー紙バンドは、残念ながら環境に対し、まだ考える余地のある製品です。再生パルプは使用していません。兎屋がお願いしている製紙の地理的条件ではカラーバンド用の古紙を集める事は難しいのと、カラー紙バンドを100%、あるいはそれに近い配合%で(再生パルプ??)で作ることは問題が大きいのです。再生パルプ100%では無い場合に、製品や色に影響の出ないくらいの%で申し訳程度に古紙を配合しても再生紙と呼ばれている現状が今の日本です。この事は紙パルプ業界で少しでも再生紙にかかわりのある人なら、あるいは憂い、人によっては黙っているような問題となっています。

さて、クラフト古紙?と言って何を想像されるでしょうか? 紙バンド用の原紙を抄造する場合には、クラフトの袋(米麦袋、粉袋)が良いとされています。(化学薬品や肥料、の入った後の回収袋は製紙時に化学変化する場合が有るので使えません)それらは一度使った袋を回収して集めますが、それ以外に製袋工場で袋を作る場合の裁断クズやヤレ品(製品にならないもの)も回収します。さらに 手提げ袋も同じような流れで集めます。また、洋段といって輸入物の段ボールケースの回収品は古紙があまり使われていないのでコレも良い原料になります。但し 和段といって日本で広く使われているいわゆる段ボール古紙は古紙がほとんどなのであまり良い原料とはいえません。一応使えますが、・・・。

クラフトの紙バンド原紙ひとつとってもこのように沢山の古紙を集めて抄造しています。コレがどういう意味かわかりますか?毎日同じ原料で作っているわけではないのです。印刷だって色々あるでしょう。紙質も古紙のパルプ配合も違っています。皆さんがよくお使いの梱包用紙バンド(クラフト400m 13本)などもクラフトの色が赤味が強かったり、白っぽかったりしてるでしょう。コレはそういう事だからです。 このように色が変わる古紙でカラー紙バンド用の原紙が100%再生パルプ使用と言って作ることが出来るものなのか?出来るとしたら、一回見てみたいものです。

私は以前 カラーの再生紙(古紙100%使用)の製紙会社で営業をしていたので、お客さんからの色違いクレームに対応するのが重要な仕事の一つでした。古紙でカラー原紙を抄造すると、時間ごとに色がドンドンぶれていき、その都度修正をするのですが、先ず元に戻る事は有りませんでした。色の管理にはかなりの投資をして、設備も導入していた抄紙マシンです。目で見るだけではなく、数値で色を表しながら、リールから原紙を降ろすたびに、測定をしていましたが、もう無力感にうちひしがられながらやっていましたね。工場の原料から抄紙、製品の方まで一丸となって必死で色あわせをして、けっして手は抜いていないのですが、これだけはどうにもなりませんでした。元色モト色(古紙の色)が違うのだから、合わしていくのは不可能ですね。色は難しいです!!

尚、ロットごとに色が違うという説明には、古紙の元色の違いもありますが、配合する染料の具合やその抄造時期の状態による、染料の表れ具合の違いなども原因として挙げられるとおもいます。

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